滞納者がいると連帯納付義務が課されることも
被相続人の財産を相続した相続人が複数いる場合は、各相続人は連帯して相続税を納付する義務があります。これを連帯納付義務といいます。
通常、財産の相続人全員が納付期限までに相続税を納税していれば、連帯納付義務が発生することはがありません。しかし、相続人のうち1人でも滞納者がいると、その滞納分について相続人全員が連帯して納付する義務を負うことになるわけです。なお、連帯納付義務が生じるのは、相続税を延滞している相続人に財産がまったくなかったり、何度督促しても相続税を納付しない場合に限られます。
土地の評価は路線価方式で
相続税を計算する場合、不動産は次の方法で評価します。
(1) 土地の評価…土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式があり、路線価が定められていないときに倍率方式を用います。
① 路線価方式
評価額=路線価×面積×補正率
② 倍率方式
評価額=固定資産税評価額×地域ごとに定める倍率
(2) 家屋の評価…固定資産税評価額
法定相続分に応じた仮定の相続税を納付し、あとで修正申告
相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまらなかった場合、各相続人が法定相続分に応じて相続したものと仮定して相続税を計算し、各相続人がその相続税を納付する必要があります。そして、遺産分割協議がまとまった段階で、修正申告を行うことになります。
なお、仮の申告・納税の際には、「配偶者の相続税額の軽減」などの優遇税制を利用することはできませんが、申告期限から3年以内に修正申告をすれば、こうした特例も使えます。
申告、納付とも相続開始から10カ月以内
相続税の申告期限と納付期限は同じで、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内です。申告期限までに申告しなかった場合、無申告加算税や延滞税が課されます。
なお、相続税の納付は金銭による一括納付が原則ですが、延納や物納による納税も認められています。
正味の相続財産が基礎控除額以下であれば非課税
相続税は、次のような流れで計算します。
① 相続財産の総額(A)を算出する(マイナスの財産があるときは、プラスの財産から引きます)
② (A)から基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いて課税遺産額(B)を算出する
③ (B)を法定相続分で財産を取得したと仮定して、各相続人の取得金額(C)を算出する
④ (C)から各相続人の仮相続税額(D)を算出する
⑤ 相続人全員の(D)を合計して、相続税の総額(E)を算出する
⑥ (E)を実際の相続割合で割り振り、各相続人の相続税額を算出する
なお、②の課税遺産額がマイナスの場合は、相続税はかかりませんので、③以下の計算は不要です。
取引金融機関に必要書類の確認を
全国銀行協会連合会では、預金相続の手続に必要となる主な書類として、次のものを掲げています。なお、金融機関により、必要となる書類が異なる場合があるので、実際の手続の際には、取引先の金融機関に確認する必要があります。
① 遺言書がある場合
・ 遺言書
・ 検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外の場合)
・ 被相続人の戸籍謄本または全部事項証明(死亡が確認できるもの)
・ その預金を相続される方(遺言執行者がいる場合は遺言執行者)の印鑑証明書
・ 遺言執行者の選任審判書謄本(裁判所で遺言執行者が選任されている場合)
② 遺言書がなく、遺産分割協議書がある場合
・ 遺産分割協議書(法定相続人全員の署名・捺印があるもの)
・ 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
・ 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
・ 相続人全員の印鑑証明書
③ 遺言書も、遺産分割協議書もない場合
・ 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
・ 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
・ 相続人全員の印鑑証明書
権利書がなくても相続登記は可能
不動産の権利書(または登記情報識別情報)は、不動産を処分する場合に、不動産の所有者に処分の意思があることを確認するための書類です。相続登記の場合は、すでに不動産の所有者は亡くなっているため、所有者の意思確認は不要なので、権利書は相続登記の必要書類に含まれていません。したがって、不動産の権利書がなくても、相続登記は可能です。
相続登記をしたうえで買主への移転登記を行う
不動産登記は権利の変動履歴を正確に記録しておく必要がありますので、相続した不動産を売却する場合、いったん相続人名義に所有権移転の登記をした後に、買主への移転登記をすることになります。
被相続人、相続人の戸籍謄本など必要書類は多い
相続による不動産の名義変更を行うために主に必要となる書類は、次のとおりです。なお、相続登記が完了するまでには、相続の内容や相続人の人数などにもよりますが、1~3カ月くらい要すると考えておいたほうがいいでしょう。
① 遺言書に基づく相続の場合
・ 遺言書(公正証書遺言以外は、家庭裁判所の検認済み)
・ 被相続人の除籍謄本(死亡時の戸籍謄本)
・ 被相続人の住民票の除票(本籍の記載あり)
・ 不動産を相続する相続人の戸籍謄本
・ 不動産を相続する相続人の住民票
・ 固定資産評価証明書
② 遺産分割協議書に基づく相続の場合
・ 遺産分割協議書
・ 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
・ 被相続人の住民票の除票(本籍の記載あり)
・ 相続人全員の戸籍謄本
・ 相続人全員の印鑑証明書
・ 不動産を相続する相続人の住民票
・ 固定資産評価証明書
③ 法定相続分に基づく相続の場合
・ 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
・ 被相続人の住民票の除票(本籍の記載あり)
・ 相続人全員の戸籍謄本
・ 不動産を相続する相続人の住民票
・ 固定資産評価証明書
相続登記に期限はないが、早めの手続を
相続登記には、いつまでに行わなければならないといった期限はありません。
しかし、相続登記をしないままにしておくと、たとえば、不動産の処分ができなかったり、2次相続が発生した場合に権利関係が複雑になるなどのデメリットがあります。したがって、遺言や遺産分割協議で、不動産の相続人が確定したら、早めに相続登記をしておいたほうがいいでしょう。