単なる名義借りは被相続人の財産
家族名義の預金となっているが、別に真の預金者がいる預金のことを名義預金といいます。たとえば、被相続人が作成した子供名義の預金や孫名義の預金のことです。このように、単に家族の名義を借りた預金であることがはっきりしている場合、その預金は被相続人の財産ですから、相続財産に含まれます。
ただ、名義預金は、どんな場合でも被相続人の財産として扱われるのかといえば、そうでない場合もあり、税務調査の際には、①名義預金で使われている印鑑、②通帳や印鑑の保管者、③預金名義者への贈与の有無、について調べたうえで、真の預金者が誰であるかを判断しているようです。
法定相続分に従って取得
相続開始から遺産分割確定までの賃料収入は誰のものなのかという点については、遺産分割によって不動産を相続することになった者が取得するのではなく、法定相続人が法定相続分に従って取得することになるとされています。そして、遺産分割後の賃料収入は、その不動産を相続した相続人が取得することになります。
なお、遺言で不動産の相続人が指定されている場合は、相続開始と同時に、その不動産は指定された相続人に帰属しますので、相続開始時からその相続人が不動産の賃料収入を取得することになります。
信用情報機関に照会する方法もある
被相続人が個人的な金銭の貸し借りをしていたかどうかは、まず借用書の有無で確認します。また、クレジット会社や消費者金融から借入をしている場合は、支払督促状などから確認します。
なお、債務の有無を調査する場合、下記の信用情報機関に問い合わせてみる方法があります。
・ 銀行・・・全国銀行協会(全国銀行個人信用情報センター)
・ クレジット会社・・・シー・アイ・シー(CIC)
・ 消費者金融・・・日本信用情報機構(JICC)
預金通帳、郵便物などで確認を
遺言書もなく、被相続人が財産目録的なものも残していないときは、次のようなものを探して、相続財産を確定することになります。
・ 預貯金のキャッシュカードや通帳
・ 金融機関や証券会社等からの資産状況に関する通知書など
・ 不動産の権利証や固定資産税納税通知書など
以上のほか、被相続人宛てに届いた郵便物から、プラスの財産、マイナスの財産に関係のありそうなものがあれば内容を確認します。
仏壇、墓地は相続の対象外
相続の対象とならない財産の主なものとしては、次のようなものがあります。
① 祭祀財産(仏壇・仏具、位牌、墓地・墓石など)
② 生命保険金
③ 被相続人の一身に専属した権利義務(身元保証人としての保証債務など)
保証債務は相続の対象。ただし、身元保証は対象外
相続人は、被相続人が残したプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も相続します。そして、保証債務はマイナスの財産ですから、財産を相続する場合、保証債務も引き継ぐことになります。
ただ、身元保証のように被相続人の一身に専属したものについては、相続する必要はありません。
賃借権は相続財産
土地や建物の賃借権は、相続財産として相続の対象になります。土地や建物の賃借権を相続する場合、賃貸主の承諾を得る必要はありません。もし、建物の賃貸主が建物の明渡しを求めてきても、相続した賃借権を主張できます。
生命保険金は受取人の固有の財産
生命保険の死亡保険金は、被保険者の死亡によって、被相続人の財産に属するわけではなく、保険金受取人の固有の財産となるので、相続財産には含まれません。
ただ、保険金受取人に被相続人が指定されているときは、死亡保険金は相続財産に帰属することになりますので、遺産分割協議によって相続人が受け取る金額が決まります。
なお、死亡保険金の受取人を誰にするかは、保険契約者が自由に決めることができるのが原則ですが、生命保険会社では一般的に、死亡保険金の受取人として指定できる範囲を、配偶者および2親等以内の血族(祖父母、父母、兄弟姉妹、子、孫など)としています。
不動産、預貯金のほか、借金も対象に
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するとされており、相続人に承継される権利義務の一切のことを「相続財産」といいます。
権利も義務も承継するわけですから、不動産、預貯金、株式、投資信託、自動車、貴金属等の「プラスの財産」も、借金やローン等の「マイナスの財産」も相続することになります。
なお、被相続人が有していた損害賠償請求権は相続財産になりますが、生命保険金は相続財産には該当しません。