大溝 行政書士事務所  = 遺言・相続 の 相談&サポート =

遺言の内容

だいぶ前に遺言書を作成したのですが、遺言書に有効期限はあるのですか?

遺言書に有効期限はないが見直しを

 遺言書に有効期限はなく、何年も前に書いた遺言書であっても有効です。ただ、遺言書の内容に問題がないかを確認し、たとえば、相続の対象となる財産の内容が変わっていたり、財産の相続人として指定した者が亡くなっている場合は、古い遺言書を訂正したり、書き直したほうがいいでしょう。

遺言に付言を書いておいたほうがいいでしょうか?

トラブルの未然防止のためにも付言を残す

 遺言書に書かれた付言は、法的な効果を生じませんが、遺言の内容を補完する役目を果たすことができるので、相続人にとって遺言の趣旨が理解しにくい場合などには、付言で「なぜ、このような遺言を残したのか」を説明することによって、スムーズな遺産相続が行われることが期待できます。
 とくに、遺留分を侵害するような内容の遺言を残す場合は、「なぜ、遺留分に配慮しなかったのか」の理由を付言として、記載しておいたほうがいいでしょう。もちろん、そうした付言があるからといって、遺留分権利者が遺留分の請求をしないとは限りませんが、少なくとも、被相続人の思いを伝えることはできます。

遺言の内容を決める際に、注意すべき点は何ですか?

相続人が揉めることがないように配慮する

 遺言の内容を決めるにあたって、遺言の内容を実現しようとする際に相続人の間で揉めることがないよう配慮する必要があります。
 たとえば、相続割合(長男に2分の1、長女と次女に4分の1ずつ)しか決めていない場合、誰がどの財産をもらうのかで揉める可能性があります。また、不動産を共有で相続させるのも、将来、「分割する、分割しない」で揉めることが想定されます。あるいは、前婚の子の相続分をゼロとするような遺留分を侵害した内容の遺言も、トラブルになる場合があります。

遺言書に借金(ローン)を引き継ぐ者を指定おけば、それ以外の者は負担しなくて済むのでしょうか?

借金の負担方法の指定は債権者に主張できない

 遺言で相続方法を決められるのはプラスの財産だけで、マイナス財産(借金、ローン)はその対象となりません。なぜなら、プラスの財産は被相続人が自由に処分方法を決められますが、マイナス財産は債権者との関係で自由にはならないからです。
 したがって、遺言で債務を負担する者を指定しても、それを債権者に主張することはできず、債権者は法定相続の割合に応じて相続人に債務の負担を求めることができます。ただし、債務を負担する者を指定したことについて、債権者が承諾すれば、債務の負担者は遺言書のとおりとなります。
 つまり、遺言書に借金(ローン)の負担方法を指定しても、債権者の承諾が得られない限り、被相続人の思いどおりにはならないということです。それを承知で、遺言書にマイナス財産に関する指示を書いておくことはもちろん構いません。そして、その遺言を相続人の間では有効なものとして受け入れることもできますので、債務の負担者として指定されていない者が、債務を返済した場合は、遺言書で指定された債務の負担者に対し、債務の返済分を返還するよう求めることができます。

遺言書に、墓の管理についても書くことができますか?

墓の管理者の指定も可能

 民法では、系譜、際具および墳墓の所有権は、「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する」と定められています。
 したがって、遺言で墓の管理者を指定することもできます。そして、その指定がないときは、慣習に従うことになります。

遺言書で財産の一部についてのみ「相続させる」と指定した場合、相続の指定をしなかった財産はどういう扱いになるのでしょか?

「相続させる」財産を持ち戻して相続分を算定

 遺言で、すべての財産について相続の指定をするのではなく、財産の一部だけについて相続の指定をして、残りの財産については相続の指定をしなかった場合、どのように財産の分割が行われるのでしょうか。たとえば、相続人は子供Aと子供Bの2人、相続財産が不動産と預金の場合で、不動産についてのみ、子供Aに「相続させる」という遺言を残したケースです。
 この場合、相続の指定をした財産が特別受益に該当するかどうかについて、「相続させる」と指定された財産も遺贈と同じように特別受益にあたり、相続の指定をした財産を持ち戻して相続分を計算するとの裁判例があります。
 したがって、相続の指定をした財産が特別受益とならないようにするには、遺言書で「持戻し免除の意思表示」を行っておく必要があります。
 いずれにしても、財産の一部だけ相続の指定をした遺言書はトラブルのもとになりかねませんので、そのほかの財産の相続についても、遺言として残しておいたほうがいいでしょう。

遺言は一通の遺言書にすべて書く必要がありますか?

財産ごとに遺言書を作ってもよい

 遺言は一通にまとめなければならないという決まりはありませんので、複数の遺言書を作成することができます。ただし、遺言書が複数あって、抵触する事項がある場合は、日付の新しい遺言書が有効となります。
 たとえば、「X不動産を長男Aに相続させる」という遺言書と「X不動産を次男Bに相続させる」という遺言書が出てきた場合、X不動産については日付の新しいほうの遺言書が有効となるわけです。
 逆に、複数の遺言書があっても、抵触する事項がなければ、すべての遺言書が有効なものとなります。
 もし、すべての財産の分け方を1つの遺言書にまとめるのがたいへんであれば、財産ごとに遺言書を作るのも一つの方法です。

遺言書には何を書いてもいいのですか?

法定遺言事項以外は法的効力なし

 民法で規定されている法定遺言事項の主なものは次のとおりです。それ以外の事項(付言事項)を遺言に記載することもできますが、法律上の効力は生じません。ただ、付言事項には、遺言者が「なぜこのような遺言を残すことにしたのか」といった思いを綴ることで、相続人同士でのトラブルを防ぐ効果があります。
① 未成年後見人の指定
② 未成年後見監督人の指定
③ 相続分の指定又は指定の委託
④ 遺産分割方法の指定又は指定の委託
⑤ 遺産分割の禁止
⑥ 遺産分割における担保責任の指定
⑦ 遺言執行者の指定又は指定の委託
⑧ 遺贈の減殺方法の指定
⑨ 非嫡出子の認知
⑩ 相続人の廃除又はその取消
⑪ 遺贈
⑫ 特別受益者の持戻しの免除
⑬ 一般財団法人を設立する意思の表示
⑭ 信託の設定

夫婦が同一の証書で遺言をすることはできますか?

複数人の遺言を1つにまとめることはできない

 民法では、「遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることはできない」と規定されており、共同遺言は禁止されています。遺言の内容について、夫婦で話し合うことは構いませんが、遺言書の作成は、夫婦それぞれが行う必要があります。

被保佐人、被補助人は遺言書を作成することができますか?

遺言能力があれば作成可能だが、トラブル防止策も必要

 被保佐人、被補助人であっても、遺言能力(遺言の内容や遺言の効果を理解できる意思能力)があれば、保佐人や補助人の同意なしに、遺言書を作成することができます。
 ただ、将来のトラブル防止のためには、被保佐人、被補助人に遺言能力があったことを証明できる医師の診断書をもらっておいたほうがいいでしょう。