期限のある相続手続にはどういうものがありますか?
相続放棄は3カ月以内、相続税申告は10カ月以内
期限のある相続手続としては、次のものがあります。(いずれも相続開始を知った時点から)
3カ月以内・・・相続放棄・限定承認
4カ月以内・・・準確定申告
10カ月以内・・・相続税の申告
相続放棄は3カ月以内、相続税申告は10カ月以内
期限のある相続手続としては、次のものがあります。(いずれも相続開始を知った時点から)
3カ月以内・・・相続放棄・限定承認
4カ月以内・・・準確定申告
10カ月以内・・・相続税の申告
まず、遺言書の有無を調べる
一般的に、遺産相続は、①遺言書の有無の確認、②相続財産の確認、③相続人の確認、④相続の放棄・限定承認の確認、⑤遺産分割協議の実施、⑥遺産分割の実施(財産の名義変更)、⑦相続税の申告、という段取りで手続を進めていきます。
なお、金融機関では預金名義者の死亡を知ると、預金の払出しを制限します。
被相続人の死亡で相続開始
民法では、「相続は、死亡によって開始する」と規定されていますので、被相続人が死亡した時点で相続が開始されます。そして、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と定められています。つまり、被相続人が死亡した時点で相続が始まり、相続の放棄や遺産分割協議はそのあとの手続になります。
死亡者に関する遺言の部分は無効
遺言書で財産を引き継ぐ者として指定された者が、遺言者よりも先に死亡した場合、その死亡者に関する遺言の部分については無効扱いとなります。つまり、遺言書の中の死亡者に関する遺言の部分は、財産引継ぎの指定がなかったものとなりますので、対象となる財産については、法定相続人による遺産分割協議を行って、どうやってその財産を引き継ぐかを決めることになります。
したがって、遺言者が遺言書で財産を引き継ぐ者として指定した者の死亡を知り、別の者を財産引継ぎ者として指定する場合は、①遺言書を書き直す方法、②財産引継ぎ者が遺言者よりも先に死亡する場合も想定した予備的遺言を記載しておく方法があります。
もし、財産を引き継ぐ者として指定した者が高齢の場合は、あらかじめ次順位の財産引継ぎ者を指定しておいたほうがいいかもしれません。予備的遺言は、たとえば「もしAが遺言者の死亡以前に死亡したときは、Aに相続させる財産をBに相続させる」というふうに書きます。
代襲相続は発生しない
民法では、「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない」と定めていますので、遺言書で財産を法定相続人以外の者に「遺贈する」と指定し、遺言者より前に受遺者が死亡したときは、その遺言事項は無効となります。
また、遺言書で財産を法定相続人に「相続させる」と指定した場合も、遺贈と同様に、原則として、その遺言事項は効力を生じないとされていますので、代襲相続は発生しません。つまり、遺言では代襲相続の効力が発生しないわけです。
したがって、もし財産引継ぎ者が遺言者よりも先に死亡した場合、その子の財産を引き継がせたいのであれば、予備的遺言として、次順位の財産引継ぎ者にその子を指定しておいたほうがいいでしょう。
公正証書遺言を利用してもトラブルのリスクは残る
離婚した妻や夫との間に生まれた子には知らせずに相続を終えたい、つまり、前婚の子には財産を渡したくないという要望だと思います。
しかし、前婚の子には遺留分がありますので、遺留分を主張された場合は、財産を渡さないで済ますというわけにはいきません。ただ、被相続人が、たとえば現在の妻や夫に財産を相続させるといった内容の公正証書遺言を作成しておくことによって、前婚の子に相続開始を知らせることなく相続を済ますことができる場合もあります(金融機関によっては、公正証書遺言があっても、預金解約をする場合、法定相続人全員の同意を求めてくることがあります)。とはいっても、なんらかの事情で前婚の子が相続開始を知れば、遺留分を請求してこないとも限りません。
ちなみに、自筆証書遺言の場合は検認という手続があり、裁判所から相続人全員に連絡が行くので、前婚の子も相続の開始を知ることになります。また、遺言書を残さなければ、相続人全員で遺産分割協議を行う必要がありますので、やはり前婚の子も相続の開始を知ることになります。
したがって、公正証書遺言で前婚の子を除いた財産分与を指定しておけば、とりあえず前婚の子への連絡はしなくて済むケースもありますが、もし、前婚の子が相続開始を知ったときは、遺留分を主張してくる可能性があり、トラブルのリスクを抱えていることは留意しておいたほうがいいでしょう。
あらためて遺言で遺言執行者を指定
遺言者より先に遺言執行者が死亡した場合、遺言執行者を指定した部分の効力は失われます。
遺言執行者を複数人指定している場合は、存命中の遺言執行者が遺言執行を行うことになりますが、遺言執行者の指定が1人だけの場合は、新たな遺言によって、あたらめて遺言執行者をの指定することになります。もし、遺言者が新たな遺言執行者を指定しなかったときは、遺言者の死後、利害関係人が家庭裁判所に遺言執行者選任の申立を行い、 家庭裁判所が必要と認めた場合には、新たな遺言執行者が選任されます。
認知、廃除は遺言執行者が必要
遺言による子供の認知、遺言による相続人の廃除や廃除の取消しは、必ず遺言執行者によって執行することとされています。
したがって、遺言のなかにこのような内容があるにもかかわらず、遺遺言執行者の指定がない場合は、家庭裁判所に対し、遺言執行者の選任の請求をする必要があります。
相続人を指定するのが一般的
遺言執行者は、未成年、破産者以外であれば誰を指名しても構いません。たとえば、友人、知人を遺言執行者とすることもできます。
一般的には、相続人を遺言執行者に指定するケースが多いようですが、もし相続人のなかから選ぶのであれば、実際に財産を相続する相続人を遺言執行者に指名するのがいいでしょう。
一方、遺言執行者は利害関係に関わること多く、相続の手続をスムーズに運ぶには、利害関係者ではなく、かつ相続に関する知識のある専門家(弁護士、司法書士、行政書士など)を遺言執行者とするのもよいと思われます。
書き直さなくても遺言は無効にならない
遺言を作成した後に遺言書に記載した財産が処分された場合、その処分によって、遺言に記載された内容と抵触する部分については、遺言を撤回したものとみなされます。 したがって、書き直さなくても、遺言が無効になることはありませんので、書き直さなくても構いません。ただ、遺言書をみた側からすると、遺言書に書かれている財産が、すでに処分されていることに戸惑うこともあるでしょうから、遺言書を書き直しておいたほうがいい場合もあるでしょう。