大溝 行政書士事務所  = 遺言・相続 の 相談&サポート =

用語解説

※ 随時、項目の追加、解説の加筆・修正を行っています

 

あ行

遺産分割協議  いさんぶんかつきょうぎ

故人が遺言書を残さなかった場合、法定相続人が遺産を相続することになるが、相続人が複数いる場合に、財産を具体的にどのように分割するかを協議することを遺産分割協議という。遺産分割協議には、相続人全員が参加する必要があり、相続人全員が合意しなければ、その協議は無効となる。
なお、故人が遺言書を残していた場合であっても、相続人全員が合意すれば、遺言の内容とは異なる割合で遺産を分けることができ、遺産分割協議を行って、遺産の分け方を決めても構わない。

遺産分割協議書  いさんぶんかつきょうぎしょ

遺産分割協議で合意した内容を文書にしたものを遺産分割協議書という。遺産分割の協議を行ったからといって、必ず遺産分割協議書を作成しなければならないというわけではない。また、遺産分割協議書を作成する場合、その書き方にルールがあるわけではないが、後々のトラブル防止や財産の名義変更手続のために、専門家に依頼して作成することが望ましい。

遺産分割審判  いさんぶんかつしんぱん

遺産分割の調停が不成立になった場合、自動的に遺産分割の審判手続が開始され、裁判官が遺産に属する物または権利の種類および性質その他一切の事情を考慮して審判をすることになる。

遺産分割調停  いさんぶんかつちょうてい

遺産の分割について相続人の間で話合いがつかない場合、家庭裁判所の遺産分割の調停手続または審判手続を利用することができる。調停手続を利用する場合は、遺産分割調停事件として申し立てる。この調停は、相続人のうちの1人もしくは何人かが他の相続人全員を相手方として申し立てることになる。調停手続では、当事者双方から事情を聴いたり,必要に応じて資料等の提出を求めたり、遺産について鑑定を行うなどして事情をよく把握したうえで、各当事者がそれぞれどのような分割方法を希望しているか意向を聴取し,解決案を提示したり,解決のために必要な助言をし、合意を目指して話合いが進められる。

遺贈  いぞう

遺言によって、遺産の全部または一部を処分すること。民法では、遺留分に関する規定に違反することはできないと定められているが、遺留分に抵触する遺贈であっても、当然に無効になるわけではなく、遺留分減殺請求の対象となるにすぎない。
遺贈には、包括遺贈と特定遺贈があり、遺贈を受ける者を受遺者という。一般に、法定相続人以外の者に遺産を譲る場合に「遺贈する」という表現を用い、法定相続人に遺産を譲る場合には「相続させる」という表現を用いる。法定相続人に対して「遺贈する」という表現を用いても構わないが、財産の承継手続に違いがあるので、法定相続人に遺産を譲る場合には「相続させる」という表現を用いたほうがよいとされる。

遺留分  いりゅうぶん

遺留分とは、一定の相続人が取得することが保障されている相続財産の一定割合のこと。故人(被相続人)の財産に依存して生活していた一定の相続人(たとえば、配偶者や子)について、相続財産の一定割合を取得できるように保障した制度。たとえば、故人が愛人に全財産を遺贈する遺言を残して死亡したとしても、故人の配偶者や子は、相続財産の一定割合を取り戻すことができる。なお、遺留分を取り戻す請求(遺留分減殺請求)をしないで、遺留分を放棄するすることもできるが、相続が開始する前に、遺留分を放棄するには家庭裁判所の許可が必要となる。

遺留分減殺請求  いりゅうぶんげんさいせいきゅう

遺留分権利者が、遺留分侵害の対象となる生前贈与や遺贈の減殺を請求すること。なお、遺留分権利者が、遺留分減殺請求の相手方(受贈者、受遺者)に減殺請求の意思表示をすると、その意思が相手方に到達した時に減殺の効力が生じる。また、減殺請求の対象として、遺贈と生前贈与がある場合は、遺贈を減殺したあとでなければ、贈与の減殺をすることができない。ただし、死因贈与は遺贈に準ずるので、生前贈与より先に減殺する。

遺留分権利者  いりゅうぶんけんりしゃ

遺留分権利者は、被相続人の配偶者、子、父母であり、兄弟姉妹は遺留分権利者に含まれない。

遺留分割合  いりゅうぶんわりあい

遺留分の割合は、遺留分権利者が直系尊属(父母)だけの場合は相続財産の3分の1、遺留分権利者が前記以外(①配偶者のみ、②配偶者+子、③配偶者+父母、④子のみ)の場合は相続財産の2分の1。法定相続分の図表参照

か行

改製原戸籍  かいせいげんこせき

戸籍法の改正によって、新しい様式の戸籍に書き替えが行なわれた場合、書替前の戸籍を改製原戸籍(原戸籍)という。
なお、戸籍のコンピュータ化をする際、元になった紙ベースで保管されていた戸籍のことも改製原戸籍とも呼ぶが、法改正による「改製原戸籍」と区別するために「平成改製原戸籍(平成原戸籍)」とも呼ばれている。

共同相続人  きょうどうそうぞくにん

故人が遺言書を残さなかった場合で、相続人が複数いるときは共同相続となり、その場合の相続人を共同相続人という。故人に配偶者と子供がいた場合、その配偶者と子供は共同相続人になる。
なお、民法では、「各共同相続人は、他の共同相続人に対して、その相続分に応じて担保の責任を負う」と規定されており、一部の共同相続人が取得した財産に瑕疵があった場合、その財産を取得した相続人は他の共同相続人に対し、相続分に応じた損害賠償の請求ができる。ただし、損害賠償の請求は、瑕疵を知ったときから1年以内に行わなければならない。

寄与分  きよぶん

被相続人の事業に関して労務を提供したり、被相続人の看護などをした相続人がいる場合、そうした貢献度を金額に換算したものを寄与分という。民法では、寄与分が認められるのは、「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」場合とされている。
寄与分を受けることができるのは相続人に限られるので、内縁の妻や息子の嫁がいくら特別の寄与をしても、その特別の寄与をもって財産を相続することはできない。寄与分は共同相続人による協議で決めるのが原則だが、協議がまとまらないときは、特別の寄与をした者からの請求により、家庭裁判所が寄与分を定めることになる。
なお、寄与分と遺贈が競合したときは遺贈が優先される。つまり、遺贈と寄与分の合計額が相続財産額を上回る場合、相続財産額から遺贈分を差し引いた残りが寄与分となる。

限定承認  げんていしょうにん

限定承認とは、相続によって得た財産の限度においてのみ、被相続人の債務を弁済するということを留保したうえで、相続の承認をすることをいう。
限定承認は、プラスの財産とマイナスの財産が同じくらいの場合に利用するメリットがあるが、限定承認を行うには共同相続人全員が共同して限定承認をする必要があるなど、手続が煩瑣であることから、実際にはほとんど利用されていないといわれる。
なお、一部の共同相続人が単純承認をすると、ほかの相続人は限定承認をすることができなくなる。一方、一部の共同相続人が相続の放棄をした場合は、その放棄した者は最初から相続人にはカウントされないことになっているので、残りの共同相続人による限定承認は認められる。
限定承認をする場合は、熟慮期間(相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月)内に、財産目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述する必要がある。

検認  けんにん

検認とは、遺言書の発見者や保管者が家庭裁判所に遺言書を提出し、相続人などの立会いのもとで、遺言書を開封して遺言書の内容を確認する手続をいう。遺言書の検認は、遺言の有効・無効を判断するための手続ではなく、遺言の形式等を調査し、検認を行った日における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造や変造を防止するための証拠保全手続の一種とされる。
家庭裁判所での検認が必要なのは、自筆証書遺言と秘密証書遺言で、公正証書遺言は、公証人が作成しているので、改ざんや偽造される可能性はないことから検認手続は必要ない。
検認手続の流れは、家庭裁判所が遺言書を開封して、用紙、日付、筆跡、訂正箇所の署名や捺印の状況、遺言書の内容を確認したうえで、検認調書を作成する。検認当日に立ち会うことができなかった相続人や利害関係者に対しては、家庭裁判所での検認手続が終了したことが通知される。
なお、検認手続を行わなかったとしても遺言書が無効となるわけではなく、相続人の1人が勝手に遺言書を開けてしまっても遺言書の内容が無効とされるわけではない。ただ、検認手続の済んでいない遺言書では、不動産名義変更(相続登記)や預貯金の解約等をすることはできない。

公証人  こうしょうにん

公証人とは、当事者その他の関係人の嘱託により「公証」をする公務員で、裁判官、検察官、弁護士、司法書士など法律関係業務についていた人の中から法務大臣が任命する。公証人が執務する場所を公証役場と呼んでいる。

公正証書遺言  こうせいしょうしょゆいごん

公正証書遺言とは、公証人が作成する公正証書によって遺言をすることをいう。
公正証書によって遺言をするには、次の方式に従わなければならない。
① 2人以上の証人の立会いがあること
② 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
③ 公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者および証人に読み聞かせるか閲覧させること
④ 遺言者と証人が、筆記内容を確認した後、各自これに署名し、印を押すこと

公正証書遺言のメリットとデメリット

<メリット>
・ 公証人が遺言書を作るので、内容面で後にトラブルになることが少ない
・ 遺言書の原本が公証役場で保管されるので、改ざんの心配がない
・ 家庭裁判所における検認手続が不要
<デメリット>

・ 費用の負担が必要
・ 証人に遺言の内容を知られてしまう

戸籍謄本・戸籍抄本  こせきとうほん・こせきしょうほん

戸籍謄本は戸籍全部事項証明書ともいい、戸籍の原本をコピーして、市町村長名と公印等を押した書類。
戸籍抄本は戸籍部分事項証明書ともいい、戸籍の見出し(本籍地、筆頭者の氏名と、戸籍の作成日、作成理由等が書かれた欄)と戸籍に記載されている人のうちの 1人分だけを抜粋コピーして、市町村長名と公印等を押した書類。

さ行


財産目録  ざいさんもくろく

財産目録とは、被相続人の財産が一覧できるようにしたものをいい、プラス財産だけでなく、借金や負債となどのマイナス財産も記載することで、全相続財産を明確にすることができる。
財産目録は必ず作成しなければならないものではないが、相続人が相続財産について共通認識をもつことによって、相続の手続をスムーズに運ぶことができるため、作成しておくことが望ましいとされるされる。

再代襲相続  さいだいしゅうそうぞく

再代襲相続とは、代襲相続人になるべき者がすでに死亡している場合、その者の子供がさらに代襲する制度をいう。再代襲できるのは第1順位(子供・直系の子孫)だけで、兄弟姉妹には再代襲は認められていない。兄弟姉妹の子(甥姪)の子(姪孫 てっそん)は、被相続人とほとんど縁がないので、相続人に含めるのは適当でないと理由づけされている。

死因贈与  しいんぞうよ

贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与契約のこと。

指定相続分  していそうぞくぶん

指定相続分とは、遺言によって指定される各相続人の遺産分配の割合をいう。相続分の指定を第三者に委託することもできる。
なお、相続分の指定が一部の相続人についてのみ行われた場合は、残余財産を指定のなかった法定相続人が相続分に応じて分割することになる。

自筆証書遺言  じひつしょうしょゆいごん

自筆証書遺言とは、遺言者が自分で書いた遺言をいう。自筆証書遺言の方式で遺言をする場合は、①遺言者が、②その全文、日付および氏名を自書し、③これに印を押す必要がある。この要件の、どれか1つでも欠けると、その遺言は無効となる。日付は、年月日が特定されている必要がある。押印は、実印でなくても、認印でも指印でも有効。
自筆証書遺言を訂正する場合は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記したうえで署名し、かつ、その変更箇所に印を押す必要がある。この要件を満たしていない場合は、その訂正は無効となる。
このように、自筆証書遺言には細かい要件があり、その要件を満たしていないとする遺言無効確認の訴えも多いといわれる。
なお、自筆証書遺言がみつかった場合、検認の手続をとる必要がある。
自筆証書遺言のメリットとデメリット
<メリット>
・費用や手間がかからない。紙、筆記具、印鑑があればすぐに作れる。
<デメリット>
・遺言が発見されないことがある。発見されても破棄されるおそれがある。

受遺者  じゅいしゃ

受遺者とは遺贈を受ける者として遺言で指定された者をいう。

準確定申告  じゅんかくていしんこく

準確定申告とは、被相続人が1月1日から死亡した日までに得た所得について相続人が申告する確定申告のこと。被相続人が亡くなった日の翌日から4カ月以内に申告と納税をする必要があり、この納税額は、被相続人の債務になる。複数の相続人がいるときは、各相続人の連署で準確定申告書を提出するか、他の相続人の名前を付記して相続人の1人が単独で申告することも可能。ただし、その場合は他の相続人に申告の内容を通知して承諾を得ておくことが必要になる。
なお、1月1日から3月15日までの間に、被相続人が前年分の確定申告を行なわないまま亡くなった場合は、前年の所得分と、亡くなった年の所得分について、準確定申告を行なうことになる。この場合の期限も、亡くなった日の翌日から4カ月以内とされている。
一方、収入が給与・年金だけだった場合は、1年分の税金が源泉徴収されているので、準確定申告をすると税金が還付される可能性がある。

証人  しょうにん

遺言書作成時の証人とは、公正証書遺言や秘密証書遺言を作成する際の立会人のことをいう。証人は、①遺言者本人の確認のため、②遺言者の意思の確認のために設けられている制度で、民法では、次の者は遺言の証人または立会人になれないと定められている。
● 未成年者
● 推定相続人および受遺者ならびにこれらの配偶者および直系血族
● 公証人の配偶者、4親等内の親族、書記および使用人
なお、証人の資格がない者を証人に立てると遺言は無効となる。

除籍謄本  じょせきとうほん

除籍謄本とは、結婚、離婚、死亡、転籍(本籍地を変更)などにより、その戸籍に記載されている人が誰もいなくなった状態の戸籍(除籍という名の戸籍)をいう。つまり、除籍謄本は、その戸籍には誰も記載されていないことを証明する書類となる。
なお、相続手続の場面では、除籍謄本とはその人が死亡したことを証明する書類を指すので、たとえば、夫婦のうち夫が亡くなった場合の除籍謄本は、妻が記載されている戸籍謄本となる。

推定相続人  すいていそうぞくにん

推定相続人とは、もし現状のままで相続が開始した場合に、相続権を有するであろうと推測される人を指す。
なお、民法では、遺留分を有する推定相続人が、被相続人に虐待をしたり、重大な侮辱を加えたときは、被相続人はその推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求して、相続権を剥奪することができるとされている。

数次相続  すうじそうぞく

数次相続とは、被相続人の遺産相続が開始したあと、遺産分割協議や相続登記が済む前に、相続人の1人が死亡し、次の遺産相続が開始されることをいう。
たとえば、父が死亡して、母と子供たちで遺産分割協議を行っているときに、母が亡くなってしまった場合、子供たちは父の相続財産についての相続(1次)だけでなく、母の財産の相続(2次)を行う必要があり、このように相続が2回以上重なっている相続の状態を数次相続と呼ぶ。この場合、第1次相続を確定させてから、第2次相続を確定させるという手続になる。

成年後見制度  せいねんこうけんせいど

成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分である者を保護するために、保護者を選任する制度。
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度とがあり、法定後見制度の場合は裁判所が職権で保護者を選任するが、任意後見制度の場合は当事者が契約で保護者を選ぶ。
法定後見には、本人の判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助の3類型があり、民法によって、それぞれ保護者の権限等が定められている。
任意後見契約は、委任契約の一種であ、契約の相手方(任意後見人となる者)を誰にするかは、本人が決定する。また、任意後見人の権限の範囲も、契約によって自由に定めることができるが、家庭裁判所が任意後見監督人選任の審判をしたから、その効力を生じる。

相次相続  そうじそうぞく

相続財産が未分割のまま、次の相続が発生することを数次相続というのに対し、相続財産の分割後に次の相続が発生した場合を相次相続といい、相続税の負担を軽減する相次相続控除という制度が設けられている。1次相続で相続税を支払っている場合、2次相続の際に、1次相続で支払った相続税の一部が控除される。

相続欠格  そうぞくけっかく

相続欠格とは、相続の資格がある者について、被相続人に対する生命侵害行為など一定の重大な非行がある場合に、相続権を失わせる制度をいう。民法では、相続欠格の事由として5つの事由を規定しているが、大きく分けると、①被相続人や他の相続人の生命侵害に関する事由、②被相続人の遺言についての不正な干渉に関する事由の2つに分けられる。

① 生命侵害に関する事由で相続人なれない者
● 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位に在る者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
● 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず又は告訴しなかった者(ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは除かれる)

② 遺言への不正な干渉に関する事由で相続人なれない者
● 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、これを取り消し、又はこれを変更することを妨げた者
● 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、これを取り消させ、又はこれを変更させた者
● 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

相続の欠格事由に該当する場合、直ちに相続資格を失うことになる。推定相続人の廃除と違い、家庭裁判所の審判は必要ない。欠格の効果は、特定の被相続人と欠格者との間で発生するにすぎず、欠格者の子は代襲相続人となれる。なお、相続欠格に該当する者は、被相続人から遺贈を受けることができない。
相続開始後に欠格事由が生じた場合は、その効果は相続開始時に遡及すると考えられている。したがって、相続開始後に欠格事由が生じた場合には、欠格者が加わってなされた遺産分割協議は無効となる。
また、被相続人が相続欠格者を許し、その相続資格を回復させることができるかについては、最近は相続欠格の宥恕(ゆうじょ)を肯定するのが多数説となっている。

相続人  そうぞくにん

被相続人の権利義務を受け継ぐ者を相続人という。

相続廃除  そうぞくはいじょ

相続廃除とは、遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して虐待、侮辱、非行等があった場合、被相続人の請求に基づいて、家庭裁判所の審判を経て、その者の相続権を剥奪する制度をいう。廃除の対象となった者は、遺留分権が否定されることになる。
廃除の対象は、配偶者、子、直系尊属で、兄弟姉妹を廃除することはできない。もし、兄弟姉妹に遺産を相続させたくなければ、他の者に財産を遺贈するなどして、兄弟姉妹の相続分をゼロとする遺言をしておけばよい。
廃除の方法は、被相続人が生前にすることもできるし、遺言によることもできる。被相続人が生前に廃除をする場合は、被相続人自身が家庭裁判所に請求することになるが、遺言書に廃除の記述があった場合は、遺言執行者が家庭裁判所に請求することになる。したがって、遺言書に廃除について書くときは、遺言執行者を定めておくほうがいい。
家庭裁判所において廃除の審判が確定したときは、廃除の効果が生じ、廃除された相続人の相続権が剥奪されるが、廃除された者が被相続人の子であった場合は、廃除された者の子は代襲相続ができる。なお、相続欠格と異なり、廃除された者であっても、遺贈を受けることはできる。
被相続人は、いつでも、廃除の取消を家庭裁判所に請求することができる。また、遺言でも廃除の取消を請求することができ、遺言執行者が 家庭裁判所に廃除取消の請求をすることになる。

相続放棄  そうぞくほうき

相続放棄とは、相続の開始によって相続人に生じた相続の効果を放棄することをいい、最初から相続人でなかったとして扱われる。被相続人が多額の借金を残して亡くなった場合に、相続の放棄をすれば、放棄した相続人はその借金を負担しないで済む。
相続放棄をするには、各相続人が自己が相続人になったことを知った時から3カ月以内(これを熟慮期間という)」に、家庭裁判所に対して「相続放棄申述書」を提出する必要がある。この期間内に申述しなかった場合は、単純承認したものとみなされる。限定承認と異なり、共同相続人がいても単独で相続放棄ができる。
なお、相続放棄は代襲原因ではないので、被相続人の子が相続の放棄をしたときは、放棄した者の子は代襲相続人にはなれない。

事実上の相続放棄とは何か?
たとえば、家庭裁判所に相続放棄の申述をしないで、自己の相続分を放棄する旨の遺産分割協議書を作成した場合が、事実上の相続放棄に該当します。裁判所が関与せず手続が簡単なので、利用されることも多いといわれる。ただ、事実上の相続放棄は、相続人間の便宜的な取り決めであり、プラス財産は放棄したが、マイナス財産(借金)は引き受けなければならなくなるケースもあることに留意する必要がある。

た行

代襲相続  だいしゅうそうぞく

代襲相続とは、被相続人が死亡する前に被相続人の子が死亡していたり、被相続人の子に相続欠格や廃除があった場合に、死亡した被相続人の子の子(被相続人の孫)が代わって相続することをいう。
代襲相続ができるのは直系卑属と被相続人の兄弟姉妹で、直系卑属は何代でも代襲することができるが(再代襲が認められている)、兄弟姉妹の場合はその子までしか代襲できない(再代襲が認められていない)。
*被相続人の子が養子の場合の代襲相続はどうなるのか?
被相続人をA、被相続人の子(養子)をBとする。AとBが養子縁組をした時点でBに子Cがいた場合、Cは相続人とならない(CはAの直系卑属ではないから)。一方、AとBが養子縁組したのちに、Bの子Dが生まれた場合は、Dは相続人になる(DはAの直系卑属だから)。

*被相続人の子の子が養子の場合は代襲相続できるのか?
被相続人をA、被相続人の子(実子)をBとする。Bに実子Cと養子Dがいた場合、CもDも相続人になる。

代償分割  だいしょうぶんかつ

遺産の分割方法の1つ。遺産分割の方法としては、現物分割、換価分割、代償分割があり、現物分割が原則とされる。換価分割は、遺産を第三者に売却し、売却代金を共同相続人で分割する方法。代償分割は、特定の相続人が不動産を相続する代わりに、他の相続人に金銭などを与える方法をいう。
相続財産である不動産を売却したくない場合や、相続財産が預貯金だけであっても、特定の相続人がすべての預貯金を相続し、特定相続人から他の相続人に金銭を支払う場合に用いられる。

単純承認  たんじゅんしょうにん

単純承認とは、相続人が何らの留保もつけずに、無限に被相続人の権利義務を承継する意思表示をいう。したがって、プラスの相続財産よりもマイナスの相続財産のほうが大きい場合には,相続財産だけでは負債を弁済しきれないので,相続人自身の財産で負債を弁済する必要がある。
単純承認は、単純承認をする旨の意思表示をすることもできるが、相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に、限定承認または相続放棄をしなかったときは単純承認をしたものとみなされる。
なお、①相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき、②相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、または悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったときも、法定単純承認が成立する。

嫡出子  ちゃくしゅつし

法律上の正当な婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子を嫡出子という。嫡出子は、身分取得が出生によるものかどうかで、①「生来の嫡出子」と②「準正による嫡出子」に分かれる。さらに、生来の嫡出子は、①-A「推定される嫡出子」と①-B「推定されない嫡出子」に分かれ、準正による嫡出子は、②-A「婚姻準正による嫡出子」と②-B「認知準正による嫡出子」に分かれる。
次のような場合は、推定される嫡出子となる。
① 妻が婚姻中に懐胎した子
② 婚姻の成立の日から200日経過後、または、婚姻の解消や取消の日から300日以内に生まれた子
一方、上記の要件を満たしていない場合は、嫡出子ではあるが、推定されない嫡出子となる。また、形式的には、上記の要件を満たしているが、実質的には妻が夫の子を懐胎することが不可能であった場合(妻の懐胎期間中に夫が不在であったなど)は、推定の及ばない子として取り扱われる。
ちなみに、推定される嫡出子について、父子関係を否定する場合は、嫡出否認の訴えを起こすことになる(提訴期間は子の出生を知った時から1年以内)。これに対し、推定されない嫡出子および推定の及ばない子について、父子関係を否定する場合は、親子関係不存在確認の訴えを起こすことになる(提訴期間なし)。

直系尊属  ちょっけいそんぞく

直系尊属とは、父母・祖父母など自分より前の世代で、直接の血縁関係にある親族をいう。養父母も直系尊属に含まれる。

直系卑属  ちょっけいひぞく

直系卑属とは、子・孫など自分より後の世代で、直接の血縁関係にある親族をいう。養子も直系卑属に含まれる。

特定遺贈  とくていいぞう

特定の具体的な財産を指定して遺贈すること。プラス財産を指定した遺贈だけでなく、「X(受遺者)の債務を免除する」という遺言も特定遺贈にあたる。なお、特定遺贈の受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈を放棄することができる。特定遺贈の放棄は、家庭裁判所に申述する必要はなく、放棄の意思表示をすれば足りる。

特別受益  とくべつじゅえき

特別受益とは、被相続人から受けた遺贈や特別な贈与などの利益を指す。共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受けたり、贈与を受けたりした者(特別受益者)がいる場合、その特別受益者が他の相続人と同じ相続分を受けられるとすれば不公平となることから、そうした特別受益を考慮したかたちで相続分が計算される。共同相続人間の公平を図ることを目的としている。なお、生前贈与のすべてが特別受益になるわけではなく、婚姻や養子縁組のためもしくは生計の資本としての贈与が特別受益として扱われる。
被相続人から特別の贈与を受けていると認められた場合には、まず被相続人の財産にその贈与の価額を戻し(これを持戻しという)、その戻したのちの額を基準として相続分を計算することになる。

特別代理人  とくべつだいりにん

相続人の中に未成年者がいる場合、未成年者は遺産分割協議に参加できず、その未成年者の親や後見人が法定代理人として遺産分割協議に参加することとされているが、その未成年者との間に利益相反が生じる場合は未成年者の代理人にはなれない。こうした場合に、家庭裁判所が特別代理人を選任し、その特別代理人が遺産分割協議に参加することになる。また、胎児も相続人として扱われるので、胎児がいる場合も特別代理人の申請が必要となる。
なお、成年後見人と成年被後見人とが同時に相続人となる場合も、利益相反関係になるので、成年被後見人のために特別代理人の選任が必要となる。

特別方式遺言  とくべつほうしきゆいごん

特別方式の遺言とは、病気やその他の特別の事情があるために、それぞれの状況に応じて簡易な方式によって行う遺言をいう。特別方式による遺言は、普通方式による遺言ができない場合の特例なので、普通方式遺言が可能になった時から6カ月間生存した場合は、その遺言は無効となる。
特別方式遺言には、次の種類がある。
①危急時遺言(家庭裁判所の確認が必要)
・ 死亡の危急が迫った者の遺言…3人以上の証人の立会いが必要
・ 船舶遭難者の遺言…2人以上の証人の立会いが必要
②隔絶地遺言(家庭裁判所の確認は不要)
・ 伝染病隔離者の遺言…警察官1人と証人1人以上の立会いが必要
・ 在船者の遺言 …船長または事務員1人と証人2人以上の立会いが必要

は行

被相続人  ひそうぞくにん

相続財産を遺して亡くなった方をいう。

非嫡出子  ひちゃくしゅつし

婚姻関係にない男女の間に生まれたの子を非嫡出子という。「婚外子」ともいう。
非嫡出子と父の間に法律上の親子関係を生じさせるには、認知の手続が必要となる。認知された非嫡出子には相続権があり、相続割合は嫡出子と同じになる。
なお、認知には、①父または母から行う任意認知と②子が父に対して行う強制認知がある。

秘密証書遺言  ひみつしょうしょゆいごん

3種類ある普通方式の遺言の1つ。遺言の内容は誰にも知られたくないが、遺言が存在していることは明確にしておきたい場合に用いられる遺言の方式。有効な秘密証書遺言を作成するには、次のような手順を踏む必要がある。

① 遺言者が作成した遺言書に署名して、印を押す。
② 遺言者はその遺言書を封筒に入れて封をし、証書に押した印と同じ印鑑で封印する。
③ 遺言者は、公証人と証人2人の前に封書を提出し、「自己の遺言書である」旨と「氏名および住所」を申述する。
④ 公証人が封紙に証書の提出日、遺言者の申述を記載し、公証人、遺言者、証人が署名、押印する。

なお、④の封紙の形状について、民法には規定がなく、②の封印された封筒を入れる封筒を封紙として運用することが多いもよう。
また秘密証書遺言の場合、遺言者による自書は要求されていないので、ワープロで作成した遺言書を秘密証書遺言とすることもできる。

付言事項  ふげんじこう

法律に定められていないことを遺言書で付言する事項を付言事項という。法定遺言事項は法的な効力を有するが、付言事項については法的な効力を生じない。
たとえば、特定の者に財産を相続させることにした理由、葬式の方法などは、法律上相続人を拘束する効力はないが、遺言者の最後の意思表明として、遺族が尊重することも十分考えられることから、相続人間での争いを防止する効果が期待できる。なお、相続人に対し、相続人の負担を求める付言事項(たとえば、隣地の買取など)については、無視しても構わない。

不在者財産管理人 ふざいしゃざいさんかんりにん

行方不明者の財産を管理する者のこと。不明者の相続人のなかに行方不明者がいる場合、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることにより、不在者の相続人に代わって不在者財産管理人が遺産分割協議に参加することができる。

負担付遺贈  ふたんつきいぞう

受遺者に一定の義務を負わせる遺贈のことを負担付遺贈という。たとえば、「不動産を与える代わりに、妻の介護をしてくれ」など。このような負担付遺贈が行われた場合、受遺者は遺贈の目的とされた財産を取得するとともに、負担を履行する義務を負う。ただし、遺贈を受けた財産を超えてまで、義務を履行する責任はなく、遺贈を受けた財産の価額を超えない範囲で負担を履行すればよい。
なお、負担付遺贈の受遺者は遺贈を放棄することができ、その場合は、負担の履行によって利益を得る者が受遺者となることができる。

包括遺贈  ほうかついぞう

相続財産の全部または割合的な一部(たとえば、相続財産の2分の1)を遺贈すること。包括遺贈の場合、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金など)も包括的に承継される。
包括遺贈の受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するので、包括遺贈を放棄するときは、相続の放棄と同様、遺贈の効力が生じたことを知った時から3カ月以内に、家庭裁判所に申述する必要がある。

法定相続人  ほうていそうぞくにん

法定相続人とは、相続財産を受け取れる者として民法が規定している相続人をいう。

法定相続分  ほうていそうぞくぶん

法定相続分とは、民法で定められた各法定相続人の相続財産の取り分の割合をいう。

ま行

持戻し  もちもどし

被相続人から特定の相続人が生前贈与や遺贈を受けていた場合、その受益分を相続財産に戻して、相続分の計算を行うことになっており、この受益分をいったん相続財産に戻すことを持戻という。
特別受益の持戻しは相続人間の公平を図ることを目的とした算定方法だが、 被相続人が持戻しを希望しない意思を表明している場合には、持戻しを行わないことになる。これを特別受益の持戻しの免除という。持戻しの免除があると、各人の具体的相続分の算定にあたって特別受益は考慮されない。生前贈与に関する持戻免除の意思表示は、生前行為によっても、 遺言によっても行うことができるが、遺贈に関する持戻免除の意思表示は、遺言によって行うことになる。

や行

遺言  ゆいごん

法律上は「いごん」と呼ばれ、人の最終的な意思を尊重し、死亡後にその意思を実現させることを法的に認める制度をいう。自分の死後に生じることになる財産の処分等の法律行為に対して,自分の意思を反映させることができるほか、相続人同士での財産分割をめぐる争いを防ぐ効果もある。

遺言事項(法定遺言事項)  ゆいごんじこう

遺言によって定めることが可能な事項については民法で規定されており、それ以外の事項を遺言に記載しても、法律上の効力を生じない。
法定遺言事項の主なものは次のとおり(①~⑧は遺言によってのみすることができる事項)。
① 未成年後見人の指定

② 未成年後見監督人の指定
③ 相続分の指定又は指定の委託
④ 遺産分割方法の指定又は指定の委託
⑤ 遺産分割の禁止
⑥ 遺産分割における担保責任の指定
⑦ 遺言執行者の指定又は指定の委託
⑧ 遺贈の減殺方法の指定
⑨ 非嫡出子の認知
⑩ 相続人の廃除又はその取消
⑪ 財産の譲渡(生前贈与、遺贈)
⑫ 特別受益者の持戻しの免除
⑬ 一般財団法人を設立する意思の表示
⑭ 信託の設定

遺言執行者  ゆいごんしっこうしゃ

遺言の執行とは遺言の内容を実現するための手続をいい、その手続をする者を遺言執行者という。遺言の執行は、まず相続人が行うが、遺言執行者がいる場合は、遺言執行者が相続人の代理人として遺言の執行を行うことになる。遺言執行者がいるときは、相続人は相続財産の処分ができなくなる。
遺言者は遺言で遺言執行者を指定することができ、相続人を遺言執行者に指定することもできる。なお、遺言執行者は遺言の執行という重要な任務を遂行することから、未成年者および破産者は遺言執行人になることができない。また、遺言者が遺言執行者を指定しなかったときは、利害関係人の請求によって、家庭裁判所が遺言執行者を選任することができる。ただし、遺言執行者が指定されていない場合、必ず家庭裁判所に遺言執行者の選任を請求しなければならないわけではなく、相続人が遺言を執行できる場合には、相続人が遺言の執行を行えばよい。

養子  ようし

養子縁組によって子となった者を養子という。養子縁組とは、親子関係のない者の間に、法的に親子関係をつくりあげる制度で、当事者間の法律関係によって成立する普通養子縁組と家庭裁判所の審判によって成立する特別養子縁組の2つがある。
普通養子縁組は、養子が実親との親子関係を存続したまま、養親との親子関係をつくるという二重の親子関係ができることになる。一方、特別養子縁組は、養子と実親との親子関係は終了し、養親の戸籍に実子として記載される。
法的な手続を行った養子には相続権があり、相続割合も実子と同じとなる。一方、たとえば再婚相手(女性)に連れ子がいても、その連れ子を養子としない限り、連れ子に相続権はない。