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遺言書を作るべきかどうかについて、どう考えればいいでしょうか?
トラブルの心配があれば作成しましょう
遺言書を残さなかった場合、通常、あなたの財産(多くても、少なくても)を、誰がどれだけの割合で相続するのかについて、法定相続人による遺産分割協議が行われます。
そして、この遺産分割協議が円満に行われ、相続人同士がもめることはないという確信があなたにあり、そしてどのようにあなたの遺産が分割されても構わないとお考えなら、遺言書を作らなくてもいいと思います。
しかし、遺産の分割割合にあなたの意思を反映させたいとか、法定相続人以外の世話になった人(たとえば、息子の嫁など)に財産の一部を残したいといった場合や、遺言書がないと相続人の間でトラブルが起こる心配があるのであれば、遺言書を作成しておいたほうがいいでしょう。
とくに、子供がいないご夫婦の場合、法定相続人として、配偶者に加え故人の兄弟姉妹が加わりますので、配偶者が思いもよらないトラブルに巻き込まれないともかぎりません。子供がいないご夫婦は、遺言書を作成しておくことをお勧めします。 -
遺書やエンディングノートと遺言書の違いは何ですか?
エンディングノートは法律行為ではない
遺書は遺族や知人に気持ちを伝える手紙です。遺書は法律行為ではなく、何をどう書いても有効か無効かという問題を生じません。また、最近はエンディングノートを書く方もふえているようですが、エンディングノートは、自身の終末期医療のこと、葬儀のこと、家族へのメッセージをまとめたメモであり、遺書と同様、法律行為ではありません。
これに対し遺言書は、自分の財産の処分の方法などを記した法律行為の一種です。したがって、民法に定められた方式によらない遺言書は無効となります。遺書やエンディングノートに財産分与について書いてもいいですか?
遺書やエンディングノートに財産分与について書くことはできます。そして、遺族全員が故人の意思を尊重し、遺書やエンディングノートに書かれたとおりに財産分与をしてもなんの問題もありません。しかし、遺書やエンディングノートは法律行為ではないので、遺書やエンディングノートに書かれたとおりに財産分けをさせる拘束力はなく、遺族の中から遺書やエンディングノートに書かれた財産分与の方法に従わない者が出てきたときは、トラブルになります。
一方、遺言書は法律行為ですから、原則として、遺族は遺言書の内容どおりに財産分けをすることになります。 -
未成年者でも遺言書の作成はできますか?
15歳以上なら遺言書が作れる
民法では、「15歳に達した者は、遺言をすることができる」と規定されていますので、15歳以上であれば、未成年であっても遺言書を作成することができます。
なお、15歳に達していない者がした遺言は、無効となります。 -
認知症の疑いがある人でも遺言書の作成はできますか?
医師の診断を受け、遺言能力を確認
民法では、「遺言者は、遺言をする時においてその能力を有していなければならない」と規定されています。遺言をした時に、意思能力があればその遺言は有効ですが、「遺言をした時は認知症で意思能力がなかったので遺言は無効」とする裁判例もあります。
つまり、認知症の疑いがある人が遺言書を作成した場合、あとになって無効と判断されることもあるので、まずは、医師の診断を受けることをお勧めします。 -
成年被後見人が遺言をすることは可能ですか?
意思能力を欠く者の遺言は無効
認知症などで、成年被後見人とされた人は意思能力を欠いているので、その状態で遺言書を作成しても無効となります。
ただ民法には、「成年被後見人が事理弁識能力を一時回復した時において遺言をするには、医師2人以上の立会いがなければならない」という規定がありますので、認知症の人が、一時的に意思能力を回復し、さらに、2人以上の医師が立ち会っていれば、遺言をすることができます。この場合、医師は、遺言者が遺言をする時に事理弁識能力を欠く状態になかった旨を遺言書に記載する必要があります。 -
成年後見人は成年被後見人の代理人として、遺言書を作成することはできますか?
成年後見人による代理作成はできない
成年後見人には、財産管理に関する代理権が与えられていますが、遺言書の作成という一身専属事項については、代理権がありませんので、成年後見人が成年被後見人に代わって遺言書を作成することはできません。
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被保佐人、被補助人は遺言書を作成することができますか?
遺言能力があれば作成可能だが、トラブル防止策も必要
被保佐人、被補助人であっても、遺言能力(遺言の内容や遺言の効果を理解できる意思能力)があれば、保佐人や補助人の同意なしに、遺言書を作成することができます。
ただ、将来のトラブル防止のためには、被保佐人、被補助人に遺言能力があったことを証明できる医師の診断書をもらっておいたほうがいいでしょう。 -
夫婦が同一の証書で遺言をすることはできますか?
複数人の遺言を1つにまとめることはできない
民法では、「遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることはできない」と規定されており、共同遺言は禁止されています。遺言の内容について、夫婦で話し合うことは構いませんが、遺言書の作成は、夫婦それぞれが行う必要があります。
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遺言書には何を書いてもいいのですか?
法定遺言事項以外は法的効力なし
民法で規定されている法定遺言事項の主なものは次のとおりです。それ以外の事項(付言事項)を遺言に記載することもできますが、法律上の効力は生じません。ただ、付言事項には、遺言者が「なぜこのような遺言を残すことにしたのか」といった思いを綴ることで、相続人同士でのトラブルを防ぐ効果があります。
① 未成年後見人の指定
② 未成年後見監督人の指定
③ 相続分の指定又は指定の委託
④ 遺産分割方法の指定又は指定の委託
⑤ 遺産分割の禁止
⑥ 遺産分割における担保責任の指定
⑦ 遺言執行者の指定又は指定の委託
⑧ 遺贈の減殺方法の指定
⑨ 非嫡出子の認知
⑩ 相続人の廃除又はその取消
⑪ 遺贈
⑫ 特別受益者の持戻しの免除
⑬ 一般財団法人を設立する意思の表示
⑭ 信託の設定 -
遺言は一通の遺言書にすべて書く必要がありますか?
財産ごとに遺言書を作ってもよい
遺言は一通にまとめなければならないという決まりはありませんので、複数の遺言書を作成することができます。ただし、遺言書が複数あって、抵触する事項がある場合は、日付の新しい遺言書が有効となります。
たとえば、「X不動産を長男Aに相続させる」という遺言書と「X不動産を次男Bに相続させる」という遺言書が出てきた場合、X不動産については日付の新しいほうの遺言書が有効となるわけです。
逆に、複数の遺言書があっても、抵触する事項がなければ、すべての遺言書が有効なものとなります。
もし、すべての財産の分け方を1つの遺言書にまとめるのがたいへんであれば、財産ごとに遺言書を作るのも一つの方法です。 -
遺言書で財産の一部についてのみ「相続させる」と指定した場合、相続の指定をしなかった財産はどういう扱いになるのでしょか?
「相続させる」財産を持ち戻して相続分を算定
遺言で、すべての財産について相続の指定をするのではなく、財産の一部だけについて相続の指定をして、残りの財産については相続の指定をしなかった場合、どのように財産の分割が行われるのでしょうか。たとえば、相続人は子供Aと子供Bの2人、相続財産が不動産と預金の場合で、不動産についてのみ、子供Aに「相続させる」という遺言を残したケースです。
この場合、相続の指定をした財産が特別受益に該当するかどうかについて、「相続させる」と指定された財産も遺贈と同じように特別受益にあたり、相続の指定をした財産を持ち戻して相続分を計算するとの裁判例があります。
したがって、相続の指定をした財産が特別受益とならないようにするには、遺言書で「持戻し免除の意思表示」を行っておく必要があります。
いずれにしても、財産の一部だけ相続の指定をした遺言書はトラブルのもとになりかねませんので、そのほかの財産の相続についても、遺言として残しておいたほうがいいでしょう。 -
遺言書に、墓の管理についても書くことができますか?
墓の管理者の指定も可能
民法では、系譜、際具および墳墓の所有権は、「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する」と定められています。
したがって、遺言で墓の管理者を指定することもできます。そして、その指定がないときは、慣習に従うことになります。 -
遺言書に借金(ローン)を引き継ぐ者を指定おけば、それ以外の者は負担しなくて済むのでしょうか?
借金の負担方法の指定は債権者に主張できない
遺言で相続方法を決められるのはプラスの財産だけで、マイナス財産(借金、ローン)はその対象となりません。なぜなら、プラスの財産は被相続人が自由に処分方法を決められますが、マイナス財産は債権者との関係で自由にはならないからです。
したがって、遺言で債務を負担する者を指定しても、それを債権者に主張することはできず、債権者は法定相続の割合に応じて相続人に債務の負担を求めることができます。ただし、債務を負担する者を指定したことについて、債権者が承諾すれば、債務の負担者は遺言書のとおりとなります。
つまり、遺言書に借金(ローン)の負担方法を指定しても、債権者の承諾が得られない限り、被相続人の思いどおりにはならないということです。それを承知で、遺言書にマイナス財産に関する指示を書いておくことはもちろん構いません。そして、その遺言を相続人の間では有効なものとして受け入れることもできますので、債務の負担者として指定されていない者が、債務を返済した場合は、遺言書で指定された債務の負担者に対し、債務の返済分を返還するよう求めることができます。 -
遺言の内容を決める際に、注意すべき点は何ですか?
相続人が揉めることがないように配慮する
遺言の内容を決めるにあたって、遺言の内容を実現しようとする際に相続人の間で揉めることがないよう配慮する必要があります。
たとえば、相続割合(長男に2分の1、長女と次女に4分の1ずつ)しか決めていない場合、誰がどの財産をもらうのかで揉める可能性があります。また、不動産を共有で相続させるのも、将来、「分割する、分割しない」で揉めることが想定されます。あるいは、前婚の子の相続分をゼロとするような遺留分を侵害した内容の遺言も、トラブルになる場合があります。 -
遺言に付言を書いておいたほうがいいでしょうか?
トラブルの未然防止のためにも付言を残す
遺言書に書かれた付言は、法的な効果を生じませんが、遺言の内容を補完する役目を果たすことができるので、相続人にとって遺言の趣旨が理解しにくい場合などには、付言で「なぜ、このような遺言を残したのか」を説明することによって、スムーズな遺産相続が行われることが期待できます。
とくに、遺留分を侵害するような内容の遺言を残す場合は、「なぜ、遺留分に配慮しなかったのか」の理由を付言として、記載しておいたほうがいいでしょう。もちろん、そうした付言があるからといって、遺留分権利者が遺留分の請求をしないとは限りませんが、少なくとも、被相続人の思いを伝えることはできます。 -
だいぶ前に遺言書を作成したのですが、遺言書に有効期限はあるのですか?
遺言書に有効期限はないが見直しを
遺言書に有効期限はなく、何年も前に書いた遺言書であっても有効です。ただ、遺言書の内容に問題がないかを確認し、たとえば、相続の対象となる財産の内容が変わっていたり、財産の相続人として指定した者が亡くなっている場合は、古い遺言書を訂正したり、書き直したほうがいいでしょう。
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書面ではなく、録音(カセットテープ等)や録画(DVD等)したものを遺言とすることはできますか?
書面以外の遺言は無効
遺言は書面で行うこととされていますので、録音・録画など記録媒体に残した音声や画像を遺言として取り扱うことはできず、無効となります。法的に有効な遺言を残すには、書面による遺言書の作成が必要です。
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両親はすでに他界し、私たち夫婦には子供がいません。私には兄弟はいますが、妻だけに財産を残せますか?
全財産を配偶者に相続させる遺言を作成する
被相続人の法定相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、法定相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。ただし、兄弟姉妹には遺留分がありませんので、配偶者に全財産を相続させる旨の遺言書を作成しておけば、配偶者だけに財産を残すことができます。
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自分の子供に財産を相続させない方法はありますか?
全財産を遺贈しても遺留分の拒否はできない
自分の子供に財産を相続させないないようにする方法としては、廃除と財産を子供以外の者に遺贈する方法などがあります。
ただし、廃除は遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して虐待、侮辱、非行等があった場合に、被相続人の請求に基づいて、家庭裁判所の審判を経て、その者の相続権を剥奪する制度ですので、子供から虐待等を受けた事実があり、それを家庭裁判所に認めてもらうことが必要となります。逆にいえば、虐待などがなければ廃除することはできません。
なお、廃除は被相続人が生前に行うこともできますし、遺言によって行うこともできます。生前廃除は、被相続人自らが廃除したい者を相手方として、家庭裁判所に廃除の請求をすることになります。そして、家庭裁判所が廃除を認める審判を下したら、その旨を市区町村に届けることによって、戸籍に廃除された旨が記載されます。遺言による廃除は、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の請求をすることになります。
廃除が認められると、遺留分を含むすべての相続権が剥奪されますので、廃除された者は一切、財産を相続することができなくなります。
一方、すべての財産を子供以外の者に遺贈するとした場合は、子供には遺留分がありますから、子供が遺留分の請求をしてきたときは、遺留分の取得まで阻止することはできません。もちろん、子供が遺言の内容に納得し、遺留分の請求をしてこなければ、子供が財産を手にすることはありません。 -
どのような場合に、実の子を廃除することができますか?
相当悪質な虐待や侮辱などが対象に
民法では、次に掲げる事由があるときに、廃除を家庭裁判所に請求することができると規定しています。
① 推定相続人が、被相続人に対して虐待をしたとき
② 推定相続人が、被相続人に対して重大な侮辱を加えたとき
③ 推定相続人にその他の著しい非行があったとき
どの程度の虐待や侮辱があれば、廃除の事由に該当するかは、家庭裁判所が判断することになりますが、廃除が認められると、一切の相続権を失うわけですから、社会通念上、相当悪質と認められる程度の事由がなければ、廃除は認められないと思われます。ちなみに、裁判例には、「家族的共同生活関係が破壊され、その修復を著しく困難にする行為」も廃除事由になるとしたものがあります。 -
法定相続分とは異なる割合で相続分を指定することはできますか?
指定相続分は法定相続分に優先
遺言で、法定相続分と異なる相続分の指定を行うと、法定相続分に優先されます。これを指定相続分といいます。そして、指定された相続分に従って、遺産分割協議を行うことになります。
なお、「相続分の指定」は、2分の1とか3分の1といったように割合を指定する方法ですが、「遺産分割方法の指定」によって、結果的に法定相続分と異なる割合で財産を相続させることもできます。たとえば、「Aに甲不動産を相続させる。Bに乙不動産を相続させる」というように、特定の財産について、「相続させる」旨の遺言をすることによって、法定相続分と異なる財産分けが行われるようにすることができます。
そして、「相続させる」旨の遺言があると、その財産についての遺産分割協議を行うことなく、指定された相続人がその財産を取得することになります。したがって、対象となる財産が不動産であった場合、指定された相続人が単独で相続登記をすることができます。 -
遺留分減殺請求に備えた遺言書の作成方法はありますか?
遺留分相当を遺留分権利者に残す内容の遺言を書く
遺留分を侵害するような内容の遺言書を作成した場合、遺留分権利者から、遺留分減殺請求がなされる可能性があります。遺言書のなかに、「なぜ、このような遺言にしたのか」を書き込むことによって、遺留分権利者が遺留分減殺請求を諦めることもありますが、被相続人の意に反して、遺留分を請求してきたときは、遺留分の取得を阻止することはできず、トラブルに発展するおそれもあります。また、相続の開始前に遺留分を放棄してもらうよう説得するという方法もありますが、遺留分権利者に拒絶されれば、やはり遺留分請求を阻止することができません。
一方、遺留分を請求してくることを前提とした場合の対策としては、次のような方法が考えられます。
① あらかじめ遺留分権利者に遺留分相当額の財産を残す内容の遺言書にしておけば、遺留分権利者にも、法律で定められた遺留分を取得できますので、遺留分で揉めることを防ぐことができます。
② 遺言者は遺留分減殺請求の順序について意思表示することができます。そこで、「遺留分の請求があった場合は、△△に相続させた預金から減殺する」という内容の遺言書にしておくことによって、もし、遺留分の請求があった場合に、どの財産から遺留分を支払うかをコントロールすることができます。 -
相続が開始する前に、遺留分を放棄してもらうにはどうすればいいですか?
家庭裁判所の許可を得ることが必要
相続が開始する前に、遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要です。
遺留分権利者に遺留分を請求しないようにお願いして、念書のたぐいを書いてもらったとしても、あくまでもお願いの域は出ず、相続が始まって、遺留分を請求してきたら拒むことはできません。
したがって、遺留分を請求してこないことを確実にするためには、相続開始前に、家庭裁判所に遺留分の放棄を認めてもらっておかなければなりません。ただ、財産をもらう予定の相続人が遺留分権利者に対し、遺留分の放棄を説得しようとしても、なかなか受け入れてもらえないでしょうから、もし、遺留分を放棄してもらおうとするのなら、被相続人が説得するのが効果的でしょう。
なお、遺留分の放棄を家庭裁判所に申し立てた場合、次のような基準に基づいて認めるかどうかの判断をするようです。
① 遺留分の放棄が本人の意思によるものでこと
② 遺留分放棄に合理的な理由と必要性があること
③ 遺留分の放棄に対して見返り的なものがあること -
遺言によって前婚の子に連絡をしないで、相続を済ますことはできますか?
公正証書遺言を利用してもトラブルのリスクは残る
離婚した妻や夫との間に生まれた子には知らせずに相続を終えたい、つまり、前婚の子には財産を渡したくないという要望だと思います。
しかし、前婚の子には遺留分がありますので、遺留分を主張された場合は、財産を渡さないで済ますというわけにはいきません。ただ、被相続人が、たとえば現在の妻や夫に財産を相続させるといった内容の公正証書遺言を作成しておくことによって、前婚の子に相続開始を知らせることなく相続を済ますことができる場合もあります(金融機関によっては、公正証書遺言があっても、預金解約をする場合、法定相続人全員の同意を求めてくることがあります)。とはいっても、なんらかの事情で前婚の子が相続開始を知れば、遺留分を請求してこないとも限りません。
ちなみに、自筆証書遺言の場合は検認という手続があり、裁判所から相続人全員に連絡が行くので、前婚の子も相続の開始を知ることになります。また、遺言書を残さなければ、相続人全員で遺産分割協議を行う必要がありますので、やはり前婚の子も相続の開始を知ることになります。
したがって、公正証書遺言で前婚の子を除いた財産分与を指定しておけば、とりあえず前婚の子への連絡はしなくて済むケースもありますが、もし、前婚の子が相続開始を知ったときは、遺留分を主張してくる可能性があり、トラブルのリスクを抱えていることは留意しておいたほうがいいでしょう。 -
遺言書で財産引継ぎ者として指定した者が遺言者より先に死亡した場合、代襲相続が発生しますか?
代襲相続は発生しない
民法では、「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない」と定めていますので、遺言書で財産を法定相続人以外の者に「遺贈する」と指定し、遺言者より前に受遺者が死亡したときは、その遺言事項は無効となります。
また、遺言書で財産を法定相続人に「相続させる」と指定した場合も、遺贈と同様に、原則として、その遺言事項は効力を生じないとされていますので、代襲相続は発生しません。つまり、遺言では代襲相続の効力が発生しないわけです。
したがって、もし財産引継ぎ者が遺言者よりも先に死亡した場合、その子の財産を引き継がせたいのであれば、予備的遺言として、次順位の財産引継ぎ者にその子を指定しておいたほうがいいでしょう。 -
遺言書で財産引継ぎ者として指定した者が遺言者より先に死亡した場合、その遺言の効力はどうなるのですか?
死亡者に関する遺言の部分は無効
遺言書で財産を引き継ぐ者として指定された者が、遺言者よりも先に死亡した場合、その死亡者に関する遺言の部分については無効扱いとなります。つまり、遺言書の中の死亡者に関する遺言の部分は、財産引継ぎの指定がなかったものとなりますので、対象となる財産については、法定相続人による遺産分割協議を行って、どうやってその財産を引き継ぐかを決めることになります。
したがって、遺言者が遺言書で財産を引き継ぐ者として指定した者の死亡を知り、別の者を財産引継ぎ者として指定する場合は、①遺言書を書き直す方法、②財産引継ぎ者が遺言者よりも先に死亡する場合も想定した予備的遺言を記載しておく方法があります。
もし、財産を引き継ぐ者として指定した者が高齢の場合は、あらかじめ次順位の財産引継ぎ者を指定しておいたほうがいいかもしれません。予備的遺言は、たとえば「もしAが遺言者の死亡以前に死亡したときは、Aに相続させる財産をBに相続させる」というふうに書きます。